- 出版社・取扱者 : 大和書房
- 発行年月 : 2019年8月15日
- 本体価格 : 本体1,500円+税
目 次 |
はじめに 一 仕事は楽しい? 二 怒るということ 三 煩悩とは? 四 地獄ってどんなところ? 五 運を考える 対談 バリアーを下ろしてみる 六 努力は報われる? 七 孤独について 八 生まれ変わりについて 九 家族について 対談 極端なこと言ったら間違っていることになる 十 自殺は許される? 十一 苦手な人 十二 「バチが当たる」について 十三 お墓参り 十四 戒名の値段 対談 「内在時間」にネタを考える 十五 退屈 十六 仏壇は必要? 十七 心を強くする 十八 調子に乗る 十九 友だちって必要? 対談 お笑いと宗教の関係 二十 お金は好き? 二十一 苦手なこと 二十二 食欲 二十三 しがらみ 二十四 死んだらどこに行く? おわりに―釈徹宗 おわりに―笑い飯・哲夫 |
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相愛大学教授・如来寺住職の釈徹宗氏と、お笑い芸人の笑い飯哲夫氏の、仏教をテーマにした往復書簡と対談をまとめた一冊。
この2人の組み合わせを意外に思われる方も多いであろうが、実は哲夫氏は、かねてより仏教に強い関心を持ち、これまでにも仏教に関する書籍を世に出している。
さて、哲夫氏が仏教に関心を持っているのはどのようなわけなのか。本書によれば、実家の辺りはかなり伝統的な風習が残っており、「一周忌、三回忌とかあるたびに近所も親戚も集まって法要して、お茶飲んで色々話して」(158ページ)という環境で過ごし、「子供の頃、なぜか仏壇の扉を開けるのと閉めるのが大好きでした」(179ページ)という子供時代を送ったことが影響しているのであろう。宗教は、日頃の習慣によって伝わる要素が多分にあると感じさせられる。釈氏も、ユダヤ人は約1900年間国を持たなかったが、ユダヤ人であり続けることができたのは、「彼らがユダヤ教の行為様式を手放さないから。(中略)伝統的な様式もあなどれない。これが根源的な支えになり得る」(63ページ)と指摘している。
対談のテーマは多岐にわたっているが、評者には、哲夫氏が仏教に興味を持つようになった経緯に興味を惹かれた。仏壇にお参りをする習慣は、効率のみを重視するのであれば、無駄と判断されるであろう。しかし、ユダヤ人の例に見られるように、信仰上の習慣は、その人のアイデンティティを保つ役割があり、危機に際しての支えとなる。教えを伝えていくとは、教義を伝えるだけでなく(あるいはそれ以上に)習慣を伝えていくことが重要であると感じさせられる。