- 出版社・取扱者 : ランダムハウス講談社
- 発行年月 : 2007年10月24日
- 本体価格 : 本体3,800円+税
目 次 |
はじめに【円仁との出会い】 1 円仁と遣唐使使節団、唐国に到着 2 揚州に滞在する 3 運搬船で楚州へ 4 黄海を渡って海州から乳山へ 5 赤山の新羅人による庇護と助言 6 蓬莱で通行許可証を待つ 7 円仁青州府で歓迎される 8 禮泉寺から黄河への行路 9 唐代の道南宮から曲陽へ 10 太行山脈を越えて 11 古代の道と宿泊施設[普通院] 12 五台山での円仁(1)[竹林寺] 13 五台山での円仁(2)高僧との出会い 14 五台山での円仁(3)五台山巡礼 15 五台山を後にする 16 円仁の通った太原への道 17 太原府で盂蘭盆会を巡る 18 汾河に沿って続く旅 19 長安での円仁(1)経典と儀式を学ぶ 20 長安での円仁(2)国際都市の宗教儀式 21 長安での円仁(3)廃仏毀釈 22 迫害を逃れて長安を脱出 23 帰国の船を探す 24 円仁の帰還 エピローグ 追記【派遣1400年を記念して遣隋使・遣唐使の足跡をたどる】 訳者あとがき 謝辞 参考文献 |
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本書は、平安時代、遣唐使の一員として中国に渡った僧・円仁の足跡を辿る、現代中国の旅の記録である。本書の著者、阿南ヴァージニア史代氏は、駐中国大使などを歴任した日本の著名な外交官の妻であり、アメリカ生まれ(後に日本国籍を取得)のアジア研究者でもある。
円仁がリアルタイムで書き記した旅行記『入唐求法巡礼行記』に導かれながら、本書は進行する。中国の美しい風景や寺院の様子などが、全ページカラーで迫ってくる。「歩くことそれ自体が、円仁にとって宗教的体験であった」(220ページ)という著者の言葉通り、円仁に突き動かされるように、そして求法僧のように、著者も倦むことなく歩き続けている。
なお、本書は難解な『入唐求法巡礼行記』の魅力を平易に紹介しているという点で、同書の入門書の一面をも併せ持っている。また、巻頭に「本書を主人の母、善信尼に捧ぐ」とあるように、仏門に入った義母からの影響に言及している点も注目される。
評者:石上 和敬(教学伝道研究センター常任研究員、武蔵野大学講師)
掲載日:2008年4月25日