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歎異抄はじめました
本の紹介
  • 釈 徹宗 (しゃく てっしゅう)
  • 大平 光代 (おおひら みつよ)
  • 出版社・取扱者 : 本願寺出版社
  • 発行年月 : 2018年04月10日
  • 本体価格 : 本体1,400円+税

はじめに
第一章 釈徹宗と大平光代の『歎異抄』
第二章 若い世代の悩みと歎異抄
第三章 世俗を生きた人間親鸞-ご消息にみる晩年のお姿-

『歎異抄』に関する書籍は、数多く出版されている。そのような中、本書は単なる解説書ではない。『歎異抄』全18条のうち、本書で直接取り上げられているのは第2条・第3条・第7条・第9条だけである。つまり、『歎異抄』そのものを解説しているのではない。「はじめに」で「『歎異抄』全般を取り上げて論じるのではなく、いくつかの条に注目して、そこから対話を展開しています。」と述べているように、釈徹宗・大平光代両氏が『歎異抄』の教えを受け取った、その経験を語り合った一冊である。

さらに、大平氏が「若い人たちの意見も聞いてみたい」と提案して開かれた座談会の様子が収録されている。そこでは、若者が釈・大平両氏と、「人生」についてに話し合った様子がつづられている。その中で評者が注目したいのは「自分中心のものさし」から「仏中心のものさし」への転換(145ページ)である。それまで自分で「正しい」と思ってきたこと(自分中心のものさし)と、教えの上で「正しい」こと(仏中心のものさし)は、「正しい」の基準が異なる。その感覚を知ることで、生きる上での苦悩が低減されると釈氏が述べており、参加した若者の発言には「仏中心のものさし」を身につけたいという意欲が感じられた。

人生で壁に突き当たることは、珍しくない。状況を変えることがかなわなくても、別の基準で考えることで、道は開ける。それが仏教の魅力であると感じさせられた。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2018年12月10日