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アジアの仏教と神々
本の紹介
  • 立川 武蔵 (たちかわ むさし)
  • 出版社・取扱者 : 法蔵館
  • 発行年月 : 2012年6月20日
  • 本体価格 : 本体3,000円+税

はじめに
インド 仏教とヒンドゥー教−バクティ崇拝の誕生−(立川 武蔵)
スリランカ シンハラ仏教徒のパリッタ儀礼と神々(藪内 聡子)
コラム1 仏教と食事(蓑輪 顕量)
ネパール 玉座の少女−クマリ−(前田 千郷)
チベット チベットの仏教とポン教(立川 武蔵)
ミャンマー ミャンマー上座仏教の世界−出家者の視点から−(藏本 龍介)
コラム2 上座仏教社会における女性の出家(飯國 有佳子)
タイ タイの仏教と神々(田邉 和子)
カンボジア カンボジア農村における死者儀礼(小林 知)
ラオス ラオスの仏教と精霊信仰(池上 要靖)
コラム3 金鯱・金比羅(立川 武蔵)
ベトナム ベトナム仏教に影響を与えた民間信仰について−三府・四府聖母信仰を中心として−(トラン・クォック・フオン)
インドネシア インドネシア・バリ島における大乗仏教(スゲング・タント)
中国 中国仏教と『盂蘭盆経』(大野 榮人・武藤 明範)
コラム4 六祖信仰の現在(陳 継東)
台湾 台湾の仏教と神々(林 觀潮)
コラム5 媽祖信仰(鄭 夙雯)
韓国 韓国仏教における神々−山神と神衆を中心として−(釈 悟震)
コラム6 北斗七星が降りた寺−韓国・雲住寺−(佐藤 厚)
日本 法会・祈願・葬送にみる神と仏(蓑輪 顕量)
コラム7 死者供養の二つの位相(池上 良正)
日本 流行神・シャーマン・霊神−近世日本の「神人習合」−(林 淳)
コラム8 カイラス修験道での一週間(宮家 準)
あとがき
執筆者略歴

仏教の歴史を語る際には、文献研究から得られた成果をもとに、インド、中国、日本の仏教を記述することが多い。本書はこうした教科書的な仏教理解を超えて、「『仏教はその歴史において他の多神教的伝統からどのような影響を受けたか、またどのような影響を与えたか』という問いに答えることを通じて、仏教の本質に迫ろうとする」(「はじめに」)編集意図の下、アジア諸地域の儀礼や信仰のあり方に見える「生きた仏教」を紹介する。

各章はそれぞれの地域における仏教略史とともに、死者儀礼や土着の神々との関連を紹介しており、語られる機会の少ない東南アジアの国々や近世の日本まで幅広く扱う。本書を通じて、実に各地域には各様の共存があり、「神仏習合」が日本特有ではないことに驚かされ、アジアの仏教とは様々な形で受容された仏教の集合体であることに、気づかされることだろう。本書は旧来の大乗/小乗という二元論も、仏教/土着信仰という対立論も越えた、仏教世界への新たな視座を提供する。


評者:日野 慧運(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2013年3月11日