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阿含経典(1)
本の紹介
  • 増谷 文雄 (ますたに ふみお) 編訳
  • 出版社・取扱者 : 筑摩書房(ちくま学芸文庫)
  • 発行年月 : 2012年8月10日
  • 本体価格 : 本体1,800円+税

識語
総論
存在の法則(縁起)に関する経典群
 開題
 因縁相応
 現観相応
 界相応
 無始相応
 迦葉相応
 利得と供養相応
 譬喩相応
 比丘相応
人間の分析(五蘊)に関する経典群
 開題
 蘊相応
 羅陀相応
 見相応
 煩悩相応
 婆蹉相応
解説 初期仏教の真実の姿(立川 武蔵)

『阿含経典』の「阿含」とは、「伝えられた教え」というほどの意味の言葉「アーガマ」の音写である。日本では伝統的に「小乗仏教」の経典と低く見られてきたが、南伝仏教では釈尊の説かれた教えとして大切にされている。また、近現代の仏教研究においても、その成立年代・編集過程などをめぐる議論はあるものの、「仏教の原初的なすがたを知るべきもっとも貴重なる資料」(21ページ)とされている。

本書に収められた経典の特徴の一つは、「定型表現の反復」である。著者が述べている通り(106ページ)、こうした反復は、ブッダの教えを語り伝えるために必要とされた形式であった。仏教徒たちは定型表現を繰り返し口ずさむことによって、ブッダの教えを習得し、次代へと伝承してきたのである。本書では、読者が読みやすいように、そうした反復の一部が「…」で省略されているが、読者は容易にその省略部分を理解することが出来るようになっている。本書を読みすすめていけば、現代の読者も、そうした伝承の過程の一端に触れることができるであろう。


評者:江田 昭道(浄土真宗本願寺派総合研究所委託研究員)


掲載日:2012年11月12日