- 出版社・取扱者 : NHK出版
- 発行年月 : 2017年4月5日
- 本体価格 : 本体900円+税
目 次 |
はじめに 第1講 「釈迦の仏教」から大乗仏教へ 第2講 「空」の思想が広がった―『般若経』 第3講 久遠のブッダ―『法華経』 第4講 阿弥陀仏の力―浄土教 第5講 宇宙の真理を照らす仏―『華厳経』・密教 第6講 大乗仏教はどこへ向かうのか おわりに |
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本書は、著者の講義を聴講している社会人学生からの質問をきっかけに執筆されたものである。その学生に月に1度、計6回にわたって個人講義をした内容の書籍化であり、そのため本書は対話形式で構成されている。
仏教は、言うまでもなく釈尊が説いた教えであるが、長い年月と様々な地域を経て、次第に他の宗教には見られない極端な多様性を持つようになった。その最たる例が大乗仏教といえる。
著者は、釈尊時代のオリジナルの仏教を「釈迦の仏教」と呼んで区別し、まずは釈尊の生涯を含めた内容・特徴を概説する。そして、大乗仏教がなぜ誕生したのかを丁寧に解説し、主要な大乗経典を取り上げ、それをもとに大乗仏教の思想を解説する形で話を展開していく。したがって、本書は大乗仏教思想の歴史的展開を追う、入門的な内容といえよう。
本書の書名にも見える「大乗仏教」とは、一般に出家・在家を問わず救われる教えとされる。今日の日本に伝わる伝統仏教教団は、さまざまな宗派があるが、いずれも大乗仏教である。大乗仏教は「釈迦の仏教」と比べれば、種々に大きな変化を遂げたものであり、それ故に「釈尊の教えではない」と批判されることもしばしばである。しかし、著者が「どのような状況にある人に対しても、なんらかの救済法を提示できる、万能性のある宗教になったとも言えます。宗教の存在価値が、私たちを生きる苦しみから救い出すことにあるとするなら、多様な顔を持つ大乗仏教もまた、その真理のエッセンスを取り出すことでいくらでも効能を発揮することができるはずです」(205ページ)と述べるように、その多様性は、私たちが現代社会を生きる中で感じる苦しみを和らげるなど、大切な意味を持っていることに気付かされる。
本書は、大乗仏教とは何かを知りたい方、仏教史を概観したい方、現代社会を生きるヒントを求める方など、様々な人に有益な情報をもたらす一書である。