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心に響くことば(平成29年版)
本の紹介
  • 井上 見淳 (いのうえ けんじゅん)
  • 出版社・取扱者 : 本願寺出版社
  • 発行年月 : 2016年9月1日
  • 本体価格 : 本体120円+税

表紙  仏恩ふかくおもいつつ つねに弥陀を念ずべし
一月  無明の闇を破するゆえ 智慧光仏となづけたり
二月  如来すなわち涅槃なり 涅槃を仏性となづけたり
三月  一念慶喜するひとは 往生かならずさだまりぬ
四月  仏の御名をきくひとは ながく不退にかなうなり
五月  大信心は仏性なり 仏性すなわち如来なり
六月  弥陀の回向成就して 往相・還相ふたつなり
七月  功徳の宝海みちみちて 煩悩の濁水へだてなし
八月  金剛心は菩提心 この心すなわち他力なり
九月  願力無窮にましませば 罪業深重もおもからず
十月  ねてもさめてもへだてなく 南無阿弥陀仏をとなうべし
十一月 信心の智慧にいりてこそ 仏恩報ずる身とはなれ
十二月 弥陀の回向の御名なれば 功徳は十方にみちたまう

親鸞聖人を宗祖と仰ぐ浄土真宗の教団は、歴史的事情から現在さまざまに分流している。これらの教団の枠を乗り越え、浄土真宗の教えをもとに10教団によって結成された組織が真宗教団連合である。

真宗教団連合では毎年、法語と絵によってつづった月めくりカレンダー「法語カレンダー」を発行している。2017(平成29)年版の法語は、親鸞聖人が著した和讃から13首(表紙と12カ月)選ばれている。これらの和讃の意味を解説し、それをふまえたうえで、それぞれにやさしい法話を付した小冊子が本書である。

本書の特徴は、まず明快な和讃の解説にある。著者は、親鸞聖人の教えの中で最も肝要である信心を、阿弥陀如来の「『われにまかせよ、必ず救う』という勅命を受け入れてしたがう心」(55ページ)であり、南無阿弥陀仏の念仏を「『われにまかせよ、必ず救う』との大悲のみ声」(22ページ)と述べている。また、これら親鸞聖人の教えの解説にとどまらず、著者自身の家庭生活での経験談や思い出のテレビドラマの話、出身地の光景なその他さまざまな話を交えることで、親鸞聖人の和讃をより深く味わえる一冊となっている。


評者:前田 壽雄(浄土真宗本願寺派総合研究所上級研究員)


掲載日:2017年3月14日