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随縁つらつら対談
本の紹介
  • 釈 徹宗 (しゃく てっしゅう)
  • 出版社・取扱者 : 本願寺出版社
  • 発行年月 : 2016年11月1日
  • 本体価格 : 本体1,400円+税

はじめに
第一章 どうにも収まらない
 宗教はどれも尊い 世界から仏教を見る(池上彰さん【ジャーナリスト】)
 家族の縁もはかない だからいとおしい(大村英昭さん【大阪大学名誉教授・僧侶】
第二章 負けそうななるとき
 いいんだ 俺でいいんだ(井上雄彦さん【漫画家】)
 幾星霜の時の長さが心を伸ばす(玉岡かおるさん【小説家】)
 そこがいいんじゃない!(みうらじゅんさん【イラストレーター】)
第三章 死と向き合う
 孤独死はむしろ標準 楽しく生きよう(香山リカさん【精神科医】)
 やすらかに生き やすらかに死ぬ(西山厚さん【帝塚山大学教授・前奈良国立博物館学芸部長】)
 何があっても無条件の救い(駒澤勝さん【小児科医】)
第四章 物語をつなごう
 信じる心を態度で示す 伝えたい住まいと食(杉本節子さん【料理研究家】)
 語りを響かせる 本堂の建築と文化(伊東乾さん【作曲家・東京大学大学院准教授】)
 受け取った物語を思い出してなぞりたい(篠原ともえさん【タレント】)
第五章 出会いに育てられて
 ありがとう おかげさま 丁寧にパスを渡す(二木てるみさん【声優・俳優】)
 ひっくり返す力 揺さぶる言葉(天岸淨圓さん【僧侶・布教使】)

月刊誌『大乗』(本願寺出版社)の連載「随縁対談」の書籍化である。著者と対談相手が、宗教や死生観などについて話し合う。対談相手は13名にのぼり、いずれも各分野で活躍している方々である。

たとえば、イラストレーター・みうらじゅん氏は、自分への執着が苦を招くとして「自分なくし」を提唱し、「現代の日本はとても、仏教に合っていますよね」「戦後のような状況では仏教は隆盛を極めないでしょう」と話し、著者は「高度成長期は人間でいえば思春期みたいに身心が活発な社会ですから、仏教は流行らないかもしれません。現代は自分の都合が暴れやすい社会だから目を向ける人がいる」と応じる。精神科医・香山リカ氏は、「お葬式や法要は残された人のためのもの(中略)初七日、四十九日、お盆、祥月命日と、節目節目を通して、だんだん悲しみが薄らいでいきます」と述べ、「葬儀不要」は遺族にとって「残酷なこと」と警告する。

いずれも、仏教を思想として学んでいるだけでは気づかない事柄である。対談相手が自身の経験を語り、仏教を通すとその経験がどのような意味を持つのかを、対談を通して探っていく。仏教と一見関係なさそうな事柄に、実は仏教が潜んでいる様相を明らかにする、興味深い対談である。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2017年2月16日