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越前 浄土真宗御門徒を支えた道場さんを訪ねて
本の紹介
  • 道場研究会 (どうじょうけんきゅうかい) 編著
  • 出版社・取扱者 : 道場研究会
  • 発行年月 : 2016年6月15日
  • 本体価格 : 本体1,000円+税

はじめに
大野市
勝山市
永平寺町・坂井市
福井市・鯖江市・池田町
穴馬の道場
道場で使う言葉
道場と集落
勝山地区の道場
平泉寺地区での道場行事
蓮如上人御掛錫の碑
四カ谷十八日講
道場の喚鐘
永平寺町の道場
浄土真宗と越前
吉崎と蓮如上人
座談会 道場さんの未来を語る
道場を調査して
あとがき

「道場」と聞くと、どのような場所を想像するだろうか。多くの人は、剣道や柔道など、武道の稽古場を思い浮かべるかもしれない。しかし、「道場」とは、さとり(=道)を開く場所というのが本来の意味であり、釈尊がさとりを開いた菩提樹下や、仏道修行の場所を指す。浄土真宗においては、門信徒が仏法聴聞をする「聞法の場」を道場と呼んできた。とくに越前地方(福井県嶺北)における「道場」は、寺院とは別に、地域の人々が集まって仏事を勤める宗教施設を指す。越前地方の道場は各集落にあり、土地の人々は親しみを持って「道場さん」などと呼んでいる。道場の管理は、「道場主」と呼ばれる在家者(僧侶ではない仏教徒)を中心として、地域の人々が行っている。

本書は、越前地方に残る浄土真宗の道場を紹介するものである。各道場の歴史や現状の解説とともに、建物や行事の様子などが写真で紹介され、地域に信仰が根付き、道場が地域の人々を結びつけている様子が感じられる。さらに、行事日が紹介されている道場もあることから、実際に道場めぐりをすることもできる。本書を片手に「道場さん」を訪ねてみてはどうだろうか。

なお、越前地方には、本書で紹介されている以外にも道場が存在するが、存続が難しくなっている道場もある。本書では、再び訪れた時には建物が無くなっていたことや、建物解体ために仏具を運びだしているところに立ち会ったことなども語られている。

その存在が消えようとしている道場がある中、地域の方々に守られ、受け継がれている道場の現状を伝える貴重な一冊である。

なお、本書は一般の書店での取り扱いがないので、道場研究会(福井市上森田町14-23-1、電話0776-56-0403)まで問い合わせられたい。


評者:楠 正照(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2016年10月14日