- 出版社・取扱者 : 河出書房新社(KAWADE夢文庫)
- 発行年月 : 2016年4月1日
- 本体価格 : 本体620円+税
目 次 |
「宗教上のタブー」と「戒律」の切っても切れない関係-プロローグ 1章 美味しくても食べてはいけないのはなぜ?-「食」をめぐる、さまざまなタブー 2章 それは時に「2人の合意」より重い-戒律が分断する「性と愛」 3章 救いを求めれば、現世の生き方も変わる-「死後の世界」はどう説かれてきたか 4章 共通する教えと、異なるスタイル-何を尊び、どのように祈るのか 5章 価値観を教え継ぐシステムとして-「教育」と宗教はどこまで不可分か 6章 神は、清く貧しい者を愛するか-「お金」と宗教の悩ましい関係 7章 歴史上、繰り返された排斥と統合-戦争を禁じる宗教、認める宗教 8章 意識しえないからこそ、時に危うい-生活に溶け込む信仰と戒律 グローバル社会における相互理解のために-エピローグ |
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「浄土真宗では、○○をしてはいけないんですよね?」法事の席などで、こういった質問をうけることが多い。浄土真宗には、み教えの上から推奨される(あるいは、推奨されない)行為はあるが「○○してはいけない」という明確な決まりは少ない。しかし、宗教には、「してはいけないこと」または「しなければならないこと」の取り決め(戒律)があるというのが、一般的な考えであろう。一方で、自らの行動を強く戒めるような厳しい戒律が定められた宗教というのは、多くの日本人は遠い世界の事のように感じるようである。
本書は、世界の諸宗教の戒律を取りあげている。まず多くの人が興味を持つであろう食事。近年イスラム関係の話題で取りあげられるハラール認定食品などについても解説されている。そのほか結婚と性の問題、死後の世界について、教育と宗教、金銭の問題など、興味を惹く内容がまとめられている。
著者は、「宗教の戒律は、ある行為や考え方を禁じたり戒めたりすると同時に、ある行為、考え方を勧めたりする。一方で禁じるものがあり、一方で勧めるものがあるから、それらを重ね合わせていくと、その宗教が何を大切にしているか、何を守ろうとしているかがおのずと見えてくるはずだ」という。グローバルな社会の中で、世界の諸宗教が大切にしていることを知ることは、相手を尊重し、無益な争いを避けることに繋がる。同時に、浄土真宗が、「○○してはいけない」という厳格な決まりを持たないことによって、一体何を伝えようとしているのか、考えてみてほしい。