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浄土真宗の<聖教>『安心決定鈔』を読む
本の紹介
  • 佐々木 隆晃 (ささき たかあき)
  • 出版社・取扱者 : 大法輪閣
  • 発行年月 : 2016年1月10日
  • 本体価格 : 本体1,700円+税

序文(執筆・釈徹宗)
一、黄金を掘り出すような聖教
二、本願のおこり
三、仏と私のかかわり
四、救いを受け取ること
五、教えを聞く姿勢
六、名号のいわれを心得る
七、仏と私の関係
八、本当の喜び
九、仏とともに
十、本願に誓われた念仏
十一、衆生の三業、仏の三業
十二、往生の一大事
十三、正覚の華
十四、浄土への道を歩む
十五、無為の念仏
十六、不退の報土に生ずべき
十七、本願におまかせするところ
十八、浄土に向かって生きる
十九、他に功徳や善を必要としない
二十、臨終のすがた
二十一、阿弥陀仏の光明のはたらき
二十二、教えの真実性が明らかに
二十三、仏の願いが私に届いた姿
あとがき
参考文献

浄土真宗の聖典には、浄土三部経(『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』)や親鸞聖人の著作のほかに、今日まで大切に受け継がれてきた聖教も存在する。その一つである『安心決定鈔』は、浄土真宗の教えの要を説いていることから、乱世を生き抜き本願寺を再興した蓮如上人が「黄金を掘り出すような聖教」であると絶賛し、人びとに読み勧めてきた書である。

『安心決定鈔』の「安心」とは「あんじん」と読み、「仏になることに心の定まった状態」、特に浄土教においては「阿弥陀仏の救いを信じて疑わず、浄土に往生することを願う心」(13ページ)であると、著者は定義している。また、「決定」とは「けつじょう」と読み、「何があっても決して動かない、必ずまちがいのないこと」(14ページ)を表すとしている。そして、「鈔」とは「大切なことを抜き出して集める」という意味であるから、『安心決定鈔』とは「信心の定まることについて、大切な言葉を集めた書」(14ページ)ということである。

本書はこの『安心決定鈔』の解説書であるが、浄土真宗本願寺派の聖典の編纂に携わってきた著者の読解は的確である。そればかりではなく、本書は月刊仏教総合雑誌『大法輪』に連載していた原稿を編集したこともあって、著者が筆を執ったその折々の身のまわりの出来事を追体験しながら読み進めることとなる。

文体は非常に平易で、かつ著者の誠実で真摯な性格が本書から伝わってくるようである。また、著者の体験談は思わず涙が込み上げ、心が打たれるものがある。浄土真宗を知りたい人にはお勧めの一冊である。


評者:前田 壽雄(浄土真宗本願寺派総合研究所上級研究員)


掲載日:2016年9月12日