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親鸞の風景
書評
  • 今井 雅晴 (いまい まさはる) 監修
  • 出版社・取扱者 : 茨城新聞社
  • 発行年月 : 2009年12月25日
  • 本体価格 : 本体3,800円+税

はじめに
親鸞、庵を結ぶ
親鸞の家族
親鸞、茨城をめぐる
親鸞と二十四輩
親鸞の旧跡と二十四輩〔解説〕
浄土真宗系図
茨城の旧跡地図

本願寺では2012(平成24)年に親鸞聖人750回大遠忌を迎える。それに向けて多くの著書が出版されているが、本書もその一冊である。

本書は関東時代の親鸞聖人や、その門弟縁の古刹について写真をふんだんに使用しながら解説したものである。本書を監修した今井雅晴先生は「本書では、まず親鸞が春夏秋冬に眺め、感動したであろう風景を再現することに努めた。ぜひ本書によって親鸞の思いを追体験していただきたい」と本書作製の意図を述べている。また本書は「近年の新しい親鸞伝の研究成果も最大限取り入れ」て解説されており、従来、「関東は荒野、常陸国も貧しい所」と考えられがちであったが、常陸国は「農林・水産物の豊かな、富んだ国であった」と述べられている。

本書の大きな特徴は、要点が簡潔に説明されていることである。また写真も多く掲載されており読み手に非常に分かりやすく作られている。地図も掲載されていて、それぞれの位置関係も一目瞭然である。

最初に「親鸞、庵を結ぶ」と題して、聖人の生涯や関東の活動拠点、門弟たちについて解説している。聖人が活動拠点としたと推測される稲田草庵(西念寺)をはじめ、小島草庵など9ヶ寺が紹介されている。

つづいて「親鸞の家族」と題する項では、結婚の問題や子どもの問題について言及している。妻の恵信尼公について「以前は、恵信尼は越後国の豪族の娘という説が強かった。しかし恵信尼は京都の中級の貴族の娘で、親鸞と同じ身分の出身であると見るべきである」と述べている。そして縁の5ヶ寺を写真とともに紹介している。

「親鸞、茨城をめぐる」では、鹿島神宮の存在に注目している。鹿島神宮には当時「多くの仏教書があっ」て、聖人が『教行信証』を執筆するにあたり、参考文献として用いたのではないかと推測している。この項目では、聖人と弁円と縁の深い板敷山をはじめ、6つの場所が紹介されている。

「親鸞と二十四輩」では、二十四輩についての説明と、二十四輩の成立からその後の変遷について述べられている。横曽根門徒の中心的存在であった性信の開基とされる報恩寺や、二十四輩縁の寺院が写真とともに紹介されている。

最後には「親鸞の旧跡と二十四輩〔解説〕」と題して、二十四輩の寺院についての詳しい解説が施されている。そこには宗派や現在の住所、電話番号も記されており、実際に各寺院を訪れてみる際には非常に便利に作られている。


評者:普賢 保之(京都女子大学教授)


掲載日:2010年4月12日