目 次 |
はじめに 私の出発点~「坊さんだけは遠慮してくれ」~ お坊さんに聞いてほしかった 「死なせてくれ、殺してほしい」 あらゆる痛みと苦悩 僧侶は生前に、医療者は死後に関わりを ご家族のケアも大切 お父さんカッコよかったよ 無二の親友の心停止まで 入院で自ら患者経験 沈黙の共有にも大切さ そばにいてくれるということ 医療と宗教が自然に手を携える日を夢見て おわりに |
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著者は、鹿児島県のお寺の住職であり、二十余年にわたりビハーラ活動をしている長倉伯博氏。ビハーラとは、「医療や福祉と協力しながら苦である現実と向き合い、仏教を通してその苦を乗り越え人生の意義を見出す助けとなる活動」である。
本書には、長倉氏がビハーラ活動を通して出会った患者さんやその家族の話が紹介されており、これがまさに今、老病死という苦と正面から向き合っている人々のベッドサイドの風景なのだと実感させられる。そして、「私ね、生まれてきてよかったよ。今日まで生きてきて、本当によかったよ。」「また会おうね」と言って別れることのできる、本当の幸せがそこにはあるのである。
長倉氏は、「仏教は苦難の人生を生きる私たちの応援歌である」と言う。私たちがこの世で生きている限り、避けては通れない苦しみ、それが老病死である。しかし、仏教を通し、物事の視点を変えることによって、老病死の苦しみを苦しみだけでは終わらせない人生がそこには開かれていく。本書はそんな終末期の大切なあり方を教えてくれる。
評者:岩田 香(浄土真宗本願寺派総合研究所委託研究員)
掲載日:2015年9月10日