HOME > 読む! > 仏教書レビュー > 本の紹介

求道者 愛と憎しみのインド
本の紹介
  • 佐々井 秀嶺 (ささい しゅうれい)
  • 出版社・取扱者 : サンガ(サンガ新書)
  • 発行年月 : 2015年1月1日
  • 本体価格 : 本体740円+税

はじめに
第1部 差別の地-インドで仏教の地歩を築く
第2部 インドの宗教と政治に対峙する
第3部 龍樹菩薩の地を探して
第4部 インド民衆とともに生きる
第5部 南天一乗の仏教を生きる

日本の仏教について否定的な意味で「葬式仏教」と言われることがよくある(近年は「葬式仏教」を肯定的に捉えようとする傾向も見られるが)。日本に住んでいると身近であるだけに、日本の仏教界の問題点は見えやすい。しかし、外国の仏教界については情報が少ないこともあり、問題点も見習うべき点もわかりにくいのが実情である。

本書は、日本からインドに渡り、現地で仏教僧として活動し、インド仏教興隆に力を注ぐ佐々井氏が、自身の活動や信念を語った一冊である。「結婚式の導師は稼げるイベントで(中略)お坊さんのなかには結婚式に行って、お布施が足らないともっと出せ、わざわざ来た坊主にこれだけの供養しかくれないのか、と言う悪い坊主もいるらしい」(53ページ)「インドでも求道心を持った坊さんは少なく、食えなくなって家族を養うためになる人が実際多い」(55ページ)という一面があり、インド社会にはカーストによる差別が現在も存在している。その一方、日本からやってきた佐々井氏を僧侶として受け入れ、マイノリティコミッション(宗教間の融和を図り、少数者の意見を政府に反映させるための組織)の仏教徒メンバーという政府の要職に選任する、懐の広さをインド社会は持ち合わせている。さらに言えば、「食えなくなって僧侶になる」とは「僧侶になればインドで生活していける」という意味でもある。

社会や仏教界の在り方は地域によって異なり、安易に優劣をつけるべきものではない。ただ、佐々井氏の姿やインド社会から学べることは少なくない。日本人が日本ではなくインドで仏教僧として奮闘しているという事実は、広く知られて然るべきである。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2015年5月11日