- 出版社・取扱者 : 中央公論新社(中公新書)
- 発行年月 : 2014年12月20日
- 本体価格 : 本体760円+税
目 次 |
はじめに 序章 巡礼とは 第一章 起源を探る 第二章 江戸時代の四国遍路 第三章 近代の巡礼者たち 第四章 貧困、差別、行き倒れ 第五章 近代化への道 終章 レジャー化する四国遍路 おわりに 参考文献 |
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四国遍路とは、弘法大師空海ゆかりとされる八十八箇所の寺院を巡拝するものであり、「四国八十八ヶ所巡礼」や「お四国」、「お遍路」などとも呼ばれる。多くの史料が残されている一方で、その起源や創設者、加えてその宗教的意義など、曖昧な点も多い。
本書は、近世以降の史料に基づいて、伝説と史実が混ざり合った四国遍路の実態について明らかにするものである。巡礼の肯定的な側面のみ取り上げるのではなく、ある意味否定的とも捉えられる文脈にも注目し、確認可能な資料からその歴史の全体像を把握しようとしている。著者は三重大学准教授の森正人氏で、専門は文化地理学。
分からないことだらけの四国遍路と、分かっていることも多い四国遍路。修行の道、通過儀礼、快適な旅、負のイメージ、娯楽化・・・。時代状況とともにつくり出される四国遍路の変貌ぶりを、まざまざと明示してくれる。
既往の多くの研究成果が紹介・整理されたのち、著者の新たな「四国遍路像」が描き出される好著。
評者:南條 了瑛(浄土真宗本願寺派総合研究所研究生)
掲載日:2015年3月10日