- 出版社・取扱者 : 筑摩書房(ちくま新書)
- 発行年月 : 2014年11月10日
- 本体価格 : 本体1,100円+税
目 次 |
はじめに 第一章 古代 第二章 中世 第三章 近世 第四章 近代 第五章 現代 おわりに-二階建ての哲学 あとがき 参照文献 日本思想史を学ぶための文献 日本思想史年表 事項索引 人名索引 |
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2009年に臓器移植法が改正され、再び「脳死」が議論の俎上に載せられたことは記憶に新しい。脳機能の消失が人の死と言えるのかどうか、これは医療的な観点のみならず、文化的・心情的な観点からも議論されるべき問題である。日本人が率直にどう思うのかということは、きわめて重要なテーマであると言えよう。
本書は日本思想を照覧するものであるが、その締め括りは生命倫理であり、脳死問題についての言及である。著者によれば、近年、古典哲学の研究者であっても、現代的問題に積極的に発言することが多いと言う。脳死問題は決して日常生活と無関係ではなく、誰にでも起こり得る問題である。科学・医療の進歩は著しく、また、様々な社会制度が立ち並ぶなか、私たちの生活環境は複雑化する一方にある。生命倫理や環境倫理であっても、皆が関心を持たねばならない時代に来ているだろう。だからこそ、こうした倫理的問題を考察する上での一助として、現代日本人の文化や心情が、どのような思想の変遷を経て成り立っているものなのかを知ることは有益である。教養としてのみならず、社会の諸問題を解決する糸口を本書は与えてくれることであろう。
日本人は古来より異文化を選択・受容し、それらを深化させてきた。古代中世における仏教、近世における儒教、近代における西洋思想は、今でも日本人の感性に影響を及ぼしている。哲学的思索のみならず、短歌や俳句においても、その姿をしっかりと見ることができる。本書をひも解くことによって、私たちは今自らの思うことが、どのような思想的流れのなかに裏づけられるものなのか、知ることができるであろう。