- 出版社・取扱者 : 幻冬舎ルネッサンス(幻冬舎ルネッサンス新書)
- 発行年月 : 2014年6月25日
- 本体価格 : 本体778円+税
目 次 |
はじめに 第一章 中宮寺シンクロナイズ半跏思惟像-流転する「考える人」 第二章 當麻寺サンセット浄土曼陀羅-夢を物語につむぐ 第三章 興福寺フェスタ阿修羅(上)-中央アジアのオアシス都市から 第四章 興福寺フェスタ阿修羅(下)-東のはての静寂 第五章 東大寺コスモロジー大仏-ユーラシアの終着駅へ あとがき |
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本のタイトルから、仏像の話ということだけは予想できるが、目次に目を向けると「シンクロナイズ」「サンセット」「フェスタ」「コスモロジー」といった、仏像との関係がすぐには想像できない単語が並んでいる。
著者・菊地章太氏の専攻はカトリック神学・比較宗教史とされているが、仏教に関する書籍も多く出版されている。そんな著者が今回取り上げるのが、奈良を中心とした日本の有名な仏像・仏画である。「ユーラシア・スケールでたどってみれば、今まで考えつかなかった意外な局面が見えてくるかもしれない」(はじめに)という考えのもと、通説とは異なった視点からのアプローチを試みる。
第一章「中宮寺シンクロナイズ半跏思惟像」を例に見てみよう。片脚をもう片方の脚の上にのせた「半跏」というポーズで、もの思いにふけるような姿の「半跏思惟像」。この像の多くが弥勒菩薩だと理解されてきた。国宝彫刻第1号の広隆寺の半跏思惟像も弥勒像とされている。半跏思惟像=弥勒。これは世間の「常識」ともいえる。しかし、これは確実な証拠にもとづいているわけではない。では一体、半跏思惟像とは何なのか。
半跏思惟像をはじめ、仏像や仏画に関するいくつかの疑問の答えを、菊地氏はユーラシアに求めていく。「そんな無鉄砲なこころみがあってもいいのではないか」(あとがき)という著者の言葉通り、私たちの「常識」を考え直すきっかけを与えてくれる。
評者:真名子 晃征(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)
掲載日:2015年1月13日