- 出版社・取扱者 : 河出書房新社
- 発行年月 : 2014年7月30日
- 本体価格 : 本体2,000円+税
目 次 |
序 一、 喪の始め 二、 葬式の総名 三、 二人使い 四、 寺行き 五、 枕飯 六、 ひがわり 七、 年たがえ 八、 外かまど 九、 忌の飯 一〇、 葬具 一一、入棺 一二、出立ちの膳 一三、仮門 一四、野辺送り 一五、棺〓(かつ)ぎ(〓は「弁」の「ム」が「臼」) 一六、野普請役 一七、墓葬礼 一八、火葬 一九、野がえり 二〇、墓じるし 二一、墓地の種類 二二、朝参り夕参り 二三、喪屋・霊屋 二四、釘念仏 二五、願もどし 二六、水かけ着物 二七、荒火明け 二八、仏おろし 二九、忌中と忌明け 三〇、てまどし 三一、仏の正月 三二、新盆 三三、月忌年忌 三四、問い切り 三五、所属未定 索引 解題(筒井 功) |
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本書は日本民俗学の創始者、柳田国男による『葬送習俗語彙』(1937年)の復刊版である。解題によれば本書所収の語彙は、柳田の指導の下に民俗学研究所編『綜合日本民俗語彙』にすでに再録され、これを更に充実させた「民俗語彙データベース」が現在国立歴史民俗博物館のホームページ【国立歴史民俗初物館ホームページへリンク】で公開されている。これらが「引く事典」として有為である一方、本来の事項別の体裁を復活し、通読して理解しうる「読む事典」として復刊されたのが本書である(219ページ)。人が亡くなる際の「喪の始め」から最後の年回忌の「問い切り」まで、時系列順の各事項について、日本各地の特徴的な語彙と習俗を紹介する。
柳田は序文で「葬儀はその肝要な部分が甚だしく保守的」であり「村と村との間に著しい仕来りの違いがあると共に、意外な遠方の土地にも争うべからざる一致」がある点を強調する。しかし通覧して驚かされるのは各地の葬儀の多様性である。仏教、儒教などに源流を辿れそうなものもあれば、土着的としか言いようのないもの紹介されている。今日このどれほどが残っているかと考えれば、非常に貴重な資料である。同出版社からは柳田の近い時期の『禁忌習俗事典』も復刊されており、近年の葬儀再考の機運を反映したものであろう。葬儀の本義を問い直そうという向きには、とかく夾雑物の扱いを受けがちな土着習俗であるが、本書はそこに貴重な考察の光を当てている。