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露の団姫の仏教いろは寄席
本の紹介
  • 露の団姫 (つゆの まるこ)
  • 出版社・取扱者 : 佼成出版社
  • 発行年月 : 2014年3月30日
  • 本体価格 : 本体1,400円+税

口上
第一章 世の中はこころ一つで様変わり 鹿政談/千両みかん/一眼国
第二章 真実は曇りなき目で見るものぞ 蛇含草/平林/松山鏡
第三章 今ここに出会うご縁は「ありがたし」 崇徳院/寿限無
第四章 ウソつきと見栄張り損するばかり 時うどん/八五郎坊主/ちりとてちん
第五章 愚かなる身こそ悟りに近くなり 眼鏡屋盗人/大仏の眼/近日息子
ふろく 露の団姫の京阪案内-上方落語の舞台を歩く

落語は仏教の説法に起源がある。そのため、現在演じられている落語には、仏教から題材を取ったネタが少なくない。そして、仏教と落語の関係はこれに留まらない。仏教と落語はどちらも、「立派なこともすれば、間抜けなことや腹黒いこともする、それが人間である」という見方が背景にあり、それを笑いの種にするのが落語で、私たちの姿を見直す手がかりとするのが仏教である。

本書は、落語の登場人物の言動をもとに、仏教の教えを語った一冊である。本書で取り上げられる落語は、仏教と直接は関わらないネタがほとんどである。そのような落語から仏教の教えを語ることについて、意外に思われる向きが多いであろう。しかし、仏教も落語も、私たちの姿を映し出す鏡のようなものである。本書を通して、仏教とは私たちのあり方を見直すきっかけをあたえてくれるものであると、認識を新たにさせられるだろう。

著者の露の団姫(まるこ)さんは、落語家であり尼さん(天台宗)でもある。これまでにも落語と仏教に関する本を世に出しており、本書は3冊目である。なお、著者が落語家と尼さんになったいきさつについては『プロの尼さん』(2013年、新潮社)に詳しく書かれている。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2014年10月10日