- 出版社・取扱者 : 岩波書店(岩波新書)
- 発行年月 : 2014年9月20日
- 本体価格 : 本体720円+税
目 次 |
序章 仏像の顔、ひつの顔 第一章 仏像誕生-インドと中国 第二章 飛鳥時代の仏像-杏仁形の眼・古拙の微笑 第三章 白鳳時代の仏像-あどけない顔・おおらかな表情 第四章 天平時代の仏像-国家仏教と威厳 第五章 平安時代前期の仏像-個性的な顔 第六章 平安時代後期の仏像-尊容満月の如し 第七章 鎌倉時代の仏像-力強さと写実 第八章 仏像の「仏」たるゆえん-開眼供養と白毫相 おわりに 主要参考文献 図版出典一覧 |
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本書は、仏像を見たとき「何とも、いい顔をしていらっしゃる」と思うのはなぜかという疑問を、法隆寺金堂釈迦如来像や興福寺仏頭、平等院阿弥陀如来像など、飛鳥時代から鎌倉時代までの各時代の著名な仏像を取り上げながら、「仏たるゆえん」を仏像の顔から読み解いたものである。
まず、仏像とはブッダ(仏)の姿をイメージして造り祀るようになったものであるが、それは「仏の代わり」ではなく、「仏そのもの」であることを強調している。また、仏像の働きを考える上で、仏の種類(「如来」「菩薩」「明王」「天」に分けられる)とその役割を知っておく必要があり、それは特に顔に表れるものであると述べている。
興味深いエピソードとして、仏像の顔を考えるには、人間の顔を知る必要があるとし、自ら「日本顔学会」に所属して、その研究成果を参考にしたことを挙げている。
近年、美術館や博物館で、一定の高さや照明の下で仏像を見ることができるようになったが、美術館長を勤める著者が「仏像を理解するには、寺の境内や参道、仏殿内の宗教空間も重要で、ぜひ寺を訪ねていただき、本来の場所に置かれたときの仏像に相対していただければ」と結んでいる言葉に注目すべきである。
評者:前田 壽雄(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)
掲載日:2014年10月10日