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さすらいの仏教語 暮らしに息づく88話
本の紹介
  • 玄侑 宗久 (げんゆう そうきゅう)
  • 出版社・取扱者 : 中央公論新社(中公新書)
  • 発行年月 : 2014年1月25日
  • 本体価格 : 本体760円+税

はじめに
獅子身中の虫
(中略)
菩提
仏教語索引

本書は、日常生活で何気なく使われている仏教起源のことば88語を紹介したものである。著者は禅僧にして芥川賞作家の玄侑宗久氏である。タイトルの「さすらい」とは、インドや中国起源の古い仏教語が長い年月を経るなかで、ときに意味を微妙に変化させながらも逞しく生き抜いてきたことを念頭に置いているという。また、本書は雑誌『中央公論』に8年にわたって連載された内容が骨子となっている。

これまでにも本書と同じような関心から多くの類書が公にされてきたが(たとえば、中村元編『仏教語源散策』シリーズなどは代表であろう)、類書の出版が後を絶たないということは、日本人と仏教との関係を考える上で、本書のような切り口が一つの重要な契機になると考えられてきたことに起因するものであろう。そしてまた、仏教語の意味の変遷を跡付けることが、その道程がまさに「さすらい」であったが故に、容易ではないということも理由の一つなのかもしれない。

それはともかく、本書には、類書ではあまり取り上げられない仏教語も散見される。「ふしだら」「けげん」「うろうろ」等々、流麗な文章によって意外な気づきを数多くご教示いただいた。


評者:石上 和敬(武蔵野大学教授、浄土真宗本願寺派総合研究所委託研究員)


掲載日:2014年10月10日