- 出版社・取扱者 : 芙蓉書房出版
- 発行年月 : 2013年10月18日
- 本体価格 : 本体3,200円+税
目 次 |
はじめに 第一章 チベット以前 第二章 大谷探検隊 第三章 チベットへの道 第四章 ラサの日々 第五章 「神地」との別れ 第六章 『西蔵遊記』 第七章 戦時下で 第八章 「チベット学」の軌跡 第九章 「青木文教」 おわりに 青木文教関連年譜・著作 あとがき |
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青木文教は、20世紀の初頭、大谷光瑞・本願寺第22代宗主によってチベットに派遣され、首都ラサに3年留学した経験を持つ人物である。また、第二次世界大戦中は、外務省や陸軍の嘱託としてチベット事情の調査に当たり、戦後は東京大学でチベット語の講師を務めた。
本書は彼の足跡を辿りながら、当時のチベットの様子、大谷探検隊そして青木文教が日本の仏教研究にもたらした成果をまとめると同時に、これまであまり明らかでなかった幼少期の姿も紹介する。学生時代、仏教に対して「興味を覚えるにはいたらず、飽きてしまった」とも残していた一人の青年が、一生をチベット研究に捧げたいと願うまでの経緯を追う、ドキュメンタリーとして読み進めることもできるだろう。
インドから始まった仏教。その「伝来」と聞くと、特定の個人が体系的に布教してまわったようにも感じられる。しかし、実際は、陸路も整っておらず、海路を進む技術も発達していない時代から、多くの先人一人ひとりが、信仰する教えを広めようと、命がけで伝えてきたものである。
また、仏教の「伝来」は遠い過去の話だけではない。1900年頃、世界各地からアジアに派遣された調査グループは、遺跡や寺院から数多くの新出史料を発掘した。そして今尚、新たな成果が発表され続けている。仏教はまだまだその全貌が明らかになってはいないのである。
そう考えれば、この青木文教という人物も、それほど遠くない過去に仏教を「伝来」した一人といえるのではないだろうか。そんなことを考えるきっかけを与えてくれた一冊である。