- 出版社・取扱者 : 吉川弘文館
- 発行年月 : 2013年11月1日
- 本体価格 : 本体2,000円+税
目 次 |
親鸞と善鸞-新しい見方 I 親鸞の履歴書 II 親鸞の教え III 親鸞ゆかりの寺と伝説を歩く 略年表 参考文献 |
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筑波大学名誉教授である著者が、真宗史に関する浩瀚な史料を歴史学の立場からひもといた一冊である。本書は「親鸞と東国」というタイトルではあるものの、親鸞聖人が東国(関東)で過ごした壮年期のみならず、親鸞聖人の生涯と教え全般を語っている。
著者は、親鸞聖人が晩年になって東国に派遣した息子・善鸞を義絶した事件について新たな見方を提起しており、さらに親鸞聖人の著述の多くが善鸞義絶の前後の時期になされていることに注目して、「東国があり、そこに善鸞が派遣されたからこそ、親鸞の思想を詳しく解明できるのである」(14ページ)と述べている。
本書は「親鸞の履歴書」・「親鸞の教え」・「親鸞ゆかりの寺と伝説を歩く」の3部構成となっており、加えてコラム「小説のなかの親鸞」では吉川英治『親鸞』、丹羽文雄『親鸞』、津本陽『弥陀の橋は-親鸞聖人伝-』、五木寛之『親鸞』に描かれた親鸞聖人について考察している点も、本書の特徴と言える。
巻末の参考文献は、一般読者を対象とする最小限の掲載ではあるものの、「親鸞と東国」を知る上での有益な文献資料といえるであろう。
関東における親鸞聖人の行実はいまだに多くの謎が残されている。本書を通じて「史実と伝承の聖人像」について再検証し、自身の信仰を深めていきたい。
評者:南條 了瑛(浄土真宗本願寺派総合研究所研究生)
掲載日:2014年2月10日