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プロの尼さん-落語家・まるこの仏道修行
本の紹介
  • 露の団姫 (つゆの まるこ)
  • 出版社・取扱者 : 新潮社(新潮新書)
  • 発行年月 : 2013年8月10日
  • 本体価格 : 本体720円+税

第一章 女子高生、仏教と落語に夢中
第二章 落語家修行
第三章 仏教徒とクリスチャンの結婚
第四章 まるぼうず誕生
第五章 仏教が好きやねん!

尼さん(天台宗)でもある落語家・露の団姫さん(「団姫」で「まるこ」と読む)が、自身の半生をつづった一冊である。著者は子供の時、死に対する恐怖を覚えるようになり、それを解決する答が宗教にあると期待した。そこで高校時代に『聖書』や『コーラン(クルアーン)』などを読んだが、しっくりこなかった。仏教に対しては良い印象を持っていなかったので避けていたが、書店の仏教書コーナーに「いやいやながら」足を運び、月刊誌『大法輪』(大法輪閣)を読んだところ、仏教に対する印象が好転した。これをきっかけに仏教書を読むようになり、仏教の中でもとくに『法華経』に惹かれるようになった(著者は、『法華経』を「人生を肯定する教え」「努力の教え」と捉えている)。

また、著者は幼少期から「笑い」に関心があり、吉本興業で漫才に挑んだこともあったが、自分には落語が向いているとの思いから、落語家を志すに至った。後に、「上方落語の祖」と呼ばれる江戸時代の落語家・初代露の五郎兵衛が日蓮宗の談義僧であったことを知り、さらに釈徹宗著『おてらくご』(本願寺出版社)を読んで落語と仏教の関係の深さに驚き、「生きる道が見えてきました!」という気分になったという。

高校を卒業すると落語家になり、落語家としての活動が軌道に乗ると、天台宗で出家した。「笑顔を届ける」落語と、「人生を肯定する教え」である『法華経』は、著者の中でつながっているのであろう。一時は自殺を考えたこともあった著者が、信心によって思いとどまり、やがて「幸せ」に気づいていく過程は、宗教の存在意義を明かしていると言えよう。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2013年12月10日