HOME > 読む! > 仏教書レビュー > 本の紹介

本当の仏教を学ぶ一日講座 ゴータマは、いかにしてブッダとなったのか
本の紹介
  • 佐々木 閑 (ささき しずか)
  • 出版社・取扱者 : NHK出版(NHK出版新書)
  • 発行年月 : 2013年2月10日
  • 本体価格 : 本体740円+税

はじめに いま原始仏教が見直されている
1時限目 インドに仏教が生まれるまで
2時限目 釈迦の生涯
3時限目 サンガとは何か
4時限目 釈迦の弟子たち
5時限目 部派仏教から大乗仏教へ
6時限目 いまに生きる釈迦の言葉

著書の佐々木閑教授(花園大学)はインド仏教、特に律典を専門とする研究者であるが、本レビューでも再三取り上げた通り、一般向けの著書も精力的に執筆している。

本書は教授がNHK文化センター京都教室にて昨年(2012年)半年間に亘って行った講義を、「一日講座」として編集したもの。6時限にわたり、仏教誕生前夜の古代インド文明から教団分裂・大乗仏教の起源に至るインド仏教史を解説する。類書は無数に存在するが、本書は講義調の文体もあって抜群に読みやすい。

初期仏教史は、実証的に確認される史実と神話的伝説が入り交じり、「歴史」として語りにくい部分があるのだが、そのあたりを最新の研究成果も交えつつ、実にバランスよく解説している点が素晴らしい。初期仏教を独習したい入門者には、凡百の講座を聴講するより本書の一読を勧めたい。

なお5時限目では教授の近年の研究の概括が紹介されており、ためにやや学術的に高度な、概説書にしては絞り込まれた範囲での議論が展開されている。入門者には少し難解かも知れないが、ぜひ挑戦してみてほしい。


評者:日野 慧運(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2013年10月10日