HOME > 読む! > 仏教書レビュー > 本の紹介

常陸の親鸞聖人-常陸国府から鹿島神宮へ-
本の紹介
  • 今井 雅晴 (いまい まさはる)
  • 出版社・取扱者 : 自照社出版
  • 発行年月 : 2013年5月30日
  • 本体価格 : 本体800円+税

発刊のことば
「常陸の親鸞聖人-常陸国府から鹿島神宮へ-」関係地図
はじめに
親鸞聖人と常陸国
常陸国府跡
霞ヶ浦の御草庵=如来寺
お経塚
爪かき阿弥陀堂
鹿島神宮
無量寿寺(鉾田市鳥栖)
無量寿寺(鉾田市下富田)
おわりに
あとがき

著者は筑波大学名誉教授(日本中世史、仏教史)であり、親鸞聖人の生涯を歴史学の立場から研究している。特に関東における親鸞研究については第一人者と言えるだろう。

これまでの親鸞研究では、関東時代の足跡はあまり明らかにされてこなかった。理由は確定的資料の欠落による。そこで著者は、その不足を補う為、各地に伝わる伝説、さらには当時の社会常識などを照らし合わせ関東時代の親鸞聖人の足跡を解き明かすのである。

本書は著者の講演録シリーズ「歴史を知り、親鸞を知る」第6弾として、常陸(茨城県)で生活をした親鸞聖人が、常陸国府(石岡市)や鹿島神宮(鹿嶋市)と如何なる関わり方をしていたかを明かす。

特に紹介したい内容は、親鸞聖人と鹿島神宮との関わりである。親鸞聖人といえば、神祇不拝(神を拝まない)が強調される一面もあるが、鹿島神宮との関わりは深かったようである。その背景には当時の社会常識が関係している。当時の神社では、仏教の教義を使って神道の教義を説明することが一般的であった。従って、神社の構成員の多くは僧侶によって占められ、神社の中には仏教書が置かれてあった。中でも当時関東で一番格式が高かった鹿島神宮では、仏教書が充実していたのである。常陸国で『教行信証』を執筆した親鸞聖人にとって、鹿島神宮は欠かせない要地だったのである。その為であろうか、鹿島神宮には親鸞聖人の旧跡も確認できる。

仏教書を見るために稲田の草庵(笠間市)から鹿島神宮へと通われる最中にあった常陸国府の聖人の足跡を紹介しつつ、鹿島神宮の重要性、親鸞聖人との関わりが伺い知れる一冊である。

なお、聖人が主に活動された稲田草庵については同シリーズの既刊『親鸞聖人 稲田草庵』に詳しい。


評者:網代 豊和(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2013年9月10日