HOME > 読む! > 仏教書レビュー > 本の紹介

あなたならどうする 孤立死
本の紹介
  • 中下 大樹 (なかした だいき)
  • 出版社・取扱者 : 三省堂
  • 発行年月 : 2013年3月30日
  • 本体価格 : 本体1,600円+税

はじめに
第1章 さまざまな孤立死の現場
第2章 <対談>湯浅誠×中下大樹 孤立死が増える社会とは?
第3章 <鼎談>反町吉秀×鈴木ひろみ×中下大樹 孤立死をなくす街づくりをいっしょに考えよう
おわりに

著者の中下大樹氏は、超宗派ネットワーク「寺ネット・サンガ」の代表として、貧困や自死の問題に取り組んでいる。本書は、孤立死の現場で活動した経験をもとに、孤立死やそれを引き起こす社会について語った一冊である。

著者は、家族に囲まれていても「穏やか」とはほど遠い最期もあり、孤立死だから「哀れ」とは決めつけられないとしながら、孤立死の現場となった住居は「事故物件」となって資産価値が下がり、それが周囲に波及し、ひいては国益を損ねると述べる。また、孤立死とは単身世帯に限ったことではなく、家族で暮らしていても社会とのつながりがなく、家族で孤立死する事態もあるという。

本書を通して見えてくるのは、生き方が死に方を左右するのであり、よく生きるために死の問題を考えることが大切だということである。著者は、孤立死の可能性が高いと思われる人々が孤立死の話を拒否するなど、人々が死の問題を避けようとする場面にたびたび出くわした。それを通して、誰にとっても「不都合な事実」に向き合うのはつらいことであり、それを話題とする時は「認めたくないのは当然」という態度で対応するするしかないと言う。

本書は、「自分はいずれ死ぬ」と心に留めることの大切さ、人はみな弱さを抱えているということ、を教えてくれる。

また、孤立死の問題に取り組んでいる人は大勢いるが、全てを防げるわけではない。そんなとき、「あんなに見回りをやっていたのに、孤立死を防げなかった」という話を否定せずに聞き、うなずいてくれる人が必要だと言う。これは孤立死の問題に限らず、身近な人が無力感を覚えた時の接し方として、必要なことであろう。


評者:多田 修(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2013年9月10日