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浄土和讃
本の紹介
  • 林 智康 (はやし ともやす)
  • 出版社・取扱者 : 探究社
  • 発行年月 : 2013年4月20日
  • 本体価格 : 本体2,300円+税

信を勧め疑いを誡める
「讃阿弥陀仏偈和讃」(1)
「讃阿弥陀仏偈和讃」(2)
「讃阿弥陀仏偈和讃」(3)
「大経讃」(1)光り輝く釈尊のお姿
「大経讃」(2)阿弥陀仏よりたまわる信心
「大経讃」(3)真実へ導く方便の誓い
「大経讃」(4)遇いがたい法との出遇い
「観経讃」王舎城の悲劇
「弥陀経讃」諸仏がすすめる念仏の教え
「諸経讃」あらゆる経典が弥陀を讃える
「現世利益讃」(1)
「現世利益讃」(2)諸衆護念の利益
「勢至讃」智慧の念仏
親鸞聖人と和讃
あとがき

著者は、龍谷大学の宗教部長・教授で、これまで親鸞聖人や『歎異抄』に関する著作を数多く出してきた。

本書は、親鸞聖人が76歳のときに著した『浄土和讃』の解説書である。『浄土和讃』とは、浄土三部経(『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』)や諸経典などによって、阿弥陀仏とその浄土の徳を讃えたものである。また「和讃」とは、著者が指摘しているように国宝本『浄土和讃』(高田専修寺蔵)の「現世利益讃」にある「和讃」の語の左訓(語の左側に註記として振られた仮名)に「ヤワラケホメ」(やわらげほめ)と述べていることから、浄土真宗のみ教えをだれもが理解しやすいように書かれた讃歌を意味する。

親鸞聖人はその生涯で500首以上の和讃を残しているが、このうち『浄土和讃』には118首が収録されている。冒頭の2首は、「冠頭讃」と呼ばれ、和讃全体の大意を述べる序にあたり、浄土真宗の信心を勧めて、阿弥陀仏の本願を疑うことを誡めたことを表したもので、本書の副題にもなっている。また「讃阿弥陀仏偈和讃」のはじめの6首は、「正信念仏偈」とともに門信徒が朝夕読んできた和讃で、ひろく知られている。

なお本書は、浄土真宗本願寺派総合研究所編『季刊せいてん』に連載していた原稿をまとめたものであり、浄土真宗のみ教えをわかりやすく詳しく学習・聞法し、味わいを深めるには最適の一冊となっている。


評者:前田 壽雄(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2013年8月12日