- 出版社・取扱者 : 春秋社
- 発行年月 : 2013年1月21日
- 本体価格 : 本体1,800円+税
目 次 |
はじめに 第1章 葬儀 仏教は葬儀から始まった 第2章 女性と仏教をめぐる課題 第3章 大乗仏教の立ち位置 第4章 東日本大震災から見えてきた仏教のありかた 第5章 僧侶の品格 第6章 現代仏教の重要課題 公益法人・脳死・子育て あとがき |
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現在の日本の仏教界は危機にある。僧侶の立場にある者ならば、うすうす…いや、強く感じていることだろう。
著者曰く、「自分たちが危機にあることはわかっていても、では、この状況はどうすればよくなるのか、よくわからないところにある。あるいは、それ以前に、危機の正体がいまだはっきりと見極められないことにある」と。
この本は、その危機の正体を著者が整理し、わかりやすく提示してくれている。すなわち、仏教界が直面している課題は、(1)葬儀離れ・墓離れ・寺離れという社会状況(2)僧侶の「品格」の問題(3)伝統仏教界に残る男尊女卑の問題(住職の妻や女性住職がもっと活躍できるような体制作り)(4)現場を離れて教義を学び、葬儀や供養という本来行うべき領域が疎かになっているという問題(5)寺院は公益法人の認定を得られるのかという問題、この5つに集約されてくるというのである。また、東日本大震災にも言及し、そこで何よりも僧侶に必要とされたのは、供養と説教であった、という事実を教訓としなければならないとの指摘は真摯に受け止めなければならないだろう。
何かをはじめたいが何をしてよいかわからないという僧侶の活動のヒントに、あるいは、日本の仏教界が置かれている状況を知っておきたい一般の方にもお薦めしたい良書である。
評者:上杉 泰成(浄土真宗本願寺派総合研究所研究協力者)
掲載日:2013年8月12日