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原典訳 ウパニシャッド
本の紹介
  • 岩本 裕 (いわもと ゆたか) 編訳
  • 出版社・取扱者 : 筑摩書房(ちくま学芸文庫)
  • 発行年月 : 2013年2月10日
  • 本体価格 : 本体1,400円+税

カウシータキ=ウパニシャッド(抄)
チャーンドーグヤ=ウパニシャッド(全)
ブリハッド=アーラヌヤカ=ウパニシャッド(抄)
カタ=ウパニシャッド(全)
プラシュナ=ウパニシャッド(全)

解説(岩本 裕)
文庫版解説 ウパニシャッドとは何か(立川 武蔵)

本書は、長らく入手困難であった『世界古典文学全集3 ヴェーダ、アヴェスター』(筑摩書房、1967年)の一章「ウパニシャッド」を文庫化したものである。

ウパニシャッドとは、古代インドの所謂バラモン教で発達した哲学文献群であり、紀元前300以前の成立とされる古ウパニシャッド14(ないし17)種が重要とされる。古ウパニシャッドを全訳した学術書は存在するものの、思想的に重要な5種のみコンパクトに、しかし前後の文脈を損なうことなく邦訳した本書は貴重。仏教を含む全インド思想の基盤となった、業・輪廻の思想や梵我一如(ぼんがいちにょ)の教説がここに著述される。

訳者(1910~88)はインド文学の碩学として知られ(『カター・サリット・サーガラ』<岩波書店>、『ラーマーヤナ』<平凡社>など)、また仏教にも造詣が深く、インド学の大家と呼ぶに相応しい人物である。古代インド哲学の精髄に触れる機会をお見逃しなきよう。


評者:日野 慧運(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2013年6月10日