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絵ものがたり正信偈 ひかりになった王子さま
本の紹介
  • 浅野 執持 (あさの しゅうじ)
  • 出版社・取扱者 : 法蔵館
  • 発行年月 : 2012年10月10日
  • 本体価格 : 本体1,300円+税

(絵ものがたり正信偈)
『正信偈』を見出す(石田 慶和)
『正信偈』を開く、「絵ものがたり」(釈 徹宗)

今日、浄土真宗においてもっとも親しまれている聖典のひとつである「正信偈」をイラスト入りで解説したものである。いわゆる解説本とは一線を画しており、「正信偈」が内包している物語性を全面に出した絵本という表現が正しいだろう。見開きごとに、原文、読み下し文、意訳、その意訳のイメージに合ったイラストで構成されている。中でも、最大の特徴は、訳である。単なる現代語訳ではなく、専門用語を排除した、初見でも理解できる平易な訳がつけられている。しかしながら、その訳は正確さを欠いたものではなく、深く考え抜かれたものであり、非常に新鮮である。

本のサイズは、横長、縦短であり、パッと手に取ってもらえるような、そんな雰囲気がある。本書のような、万人に親しみやすい書籍が出てくることは画期的であり、新しい伝道の切り口ともなる可能性を秘めている。ただし、物語性の表現に重点を置いていることから、後半部分の7人の高僧方(龍樹菩薩、天親菩薩、曇鸞大師、道綽禅師、善導大師、源信和尚、源空聖人)の思想、功績が述べられる箇所は省略されているので留意されたい。

親鸞聖人の教えをはじめて学ぶ方から、教学を学んでいる方まで、是非ご一読頂きたい。


評者:上杉 泰成(浄土真宗本願寺派総合研究所研究協力者)


掲載日:2013年5月10日