- 出版社・取扱者 : 本願寺出版社
- 発行年月 : 2013年2月16日
- 本体価格 : 本体800円+税
目 次 |
はじめに 第一章 精神科医日々雑感 第二章 私の履歴書 第三章 カウンセリングと仏教 第四章 生きかた・死にかた おわりに |
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著者は浄土真宗の僧侶にして精神科医でもある。とくに子どもの精神科を専門としており、また特別養護老人ホーム「ビハーラ本願寺」でも活動している。
本書は、著者が精神科医として子どもやその家族を診て思ったこと、京都教育大学や龍谷大学で教壇に立っていた経験から気づいたことや、自身の半生などをつづっている。
著者は「本当の自分を知っていくという意味で、カウンセリングと仏教は似ている」(104ページ)、「仏教とカウンセリングの共通点は、人の悩みを解決するということ」(110ページ)など、仏教とカウンセリングが通じるものであると言う。しかし、異なる点もたびたび指摘しており、とくに「死を受容する」ことが仏教とカウンセリングの違いだと説く(105ページ)。私たちは死を考えることを避けがちだが、いつかは必ず死ぬと受け入れてこそ、今を大切に生きることができると本書は語る。
本書は、各章の区切りに「教え子からのメッセージ」というコラムが挿入されており、著者の講義の様子や人となりをうかがわせる。とくに114ページのそれは、「人をまるごと認める」とはどういうことか、そしてその大切さに気づかされる。この他にも随所で、悩みを抱えた人にどう接すればよいかを述べている。
悩みのない人は皆無のはずである。種々の悩みに仏教の立場からどう考えればよいか、その手がかりをあたえてくれる本書は、仏教の公益性を考える上で資するところは大きい。