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声に出して読みたい親鸞
本の紹介
  • 斎藤 孝 (さいとう たかし)
  • 出版社・取扱者 : 草思社
  • 発行年月 : 2013年1月30日
  • 本体価格 : 本体1,400円+税

親鸞との対話
1   なむあみだぶつ
(中略)
100 南無阿弥陀仏はこれすなわち正念なり
念仏を心に入れて上機嫌に歩む

日本語ブームを巻き起こしたベストセラー『声に出して読みたい日本語』の著者がこの度、親鸞聖人に着目した。著者は若い頃から聖人に魅力を感じていたという。

本書は親鸞聖人の言葉を綴った『歎異抄』や聖人の主著『教行信証』、「和讃」などから100語を選び、その原文を総ルビ、大きな活字で組むことで「声に出して読む」ことに主眼を置いている。

声に出して本を読むことは、黙読とは異なり、目と口を使うばかりではなく、声が耳からも入ってくることとなる。著者は、親鸞聖人が「自分一人のために語りかけてくれるという感覚で読んでいくと、その言葉がよりいっそう心にしみこんでくる」(5ページ)と述べているように、声に出して読んでこそ親鸞聖人の教えの真髄が伝わってくるとともに、聖人が静かにやさしく語りかけてくる「一対一」の関係が成立する。そもそもお経を読むことには、このような意味があるということを、本書は教えてくれているようでもある。

また原文の解説は、現代の人びとが抱えるさまざまな社会問題や教育学者である著者の経験に基づいた話が織り混ざっていて、身近に親鸞聖人を感じることができ、わかりやすい内容となっている。

本書は、自分の考えや主張に凝り固まった心をときほぐし、朗らかに人生を歩むきっかけを与えてくれる一冊ではなかろうか。


評者:前田 壽雄(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2013年5月10日