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仏典をよむ 死からはじまる仏教史
本の紹介
  • 末木 文美士 (すえき ふみひこ)
  • 出版社・取扱者 : 新潮社
  • 発行年月 : 2009年4月25日
  • 本体価格 : 本体1,800円+税

はじめに
第一部 死からはじまる仏教
第一章 大いなる死-『遊行経』
第二章 死と生の協奏-『無量寿経』
第三章 他者と関わり続ける-『法華経』
第四章 否定のパワー-『般若心経』
第五章 心の中の地獄と仏-智顗『摩訶止観』
第六章 禅の中の他者と死者-圜悟『碧巌録』
第二部 日本化する仏教
第七章 現世を超えた秩序-景戒『日本霊異記』
第八章 仏教は俗世に何をなしうるのか-最澄『山家学生式』
第九章 この身のまま仏となる-空海『即身成仏義』
第十章 贈与する他者-親鸞『教行信証』
第十一章 脱構築から再構築へ-道元『正法眼蔵』
第十二章 宗教国家は可能か-日蓮『立正安国論』
第十三章 異教から見た仏教-ハビアン『妙貞問答』
あとがき

著者の末木文美士氏は国際日本文化研究センター教授。本書はインド、中国、日本の代表的な仏典を、「仏教学の成果を生かしながら、(中略)可能な限り掘り下げて、捉え返し」、「仏典を従来の固定観念から解き放ち、今日に生きる思想書として読み込」んでいく、著者の野心的な試みの成果である(「はじめに」)。「第一部 死からはじまる仏教」では、『遊行経』、『無量寿経』、『法華経』などを取り上げ、「死者という異形の他者と正面から向き合う」(「はじめに」)仏教という、著者独自の視点から読み解いている。また、「第二部 日本化する仏教」では、空海の『即身成仏儀』や親鸞聖人の『教行信証』などを取り上げ、仏教の変容、土着化について考察している。『無量寿経』や『教行信証』に対する新しい解釈は、私たち読者に大きな刺激を与えるであろう。

なお、著者の「死」「死者」に対する考え方については、『念仏の源流』(本願寺出版社、2009年)に収録されている講演録をあわせて参照されたい。


評者:爪田 一壽(教学伝道研究センター研究員)


掲載日:2009年10月13日