HOME > 読む! > 仏教書レビュー > 本の紹介

仏教と民俗 仏教民俗学入門
本の紹介
  • 五来 重 (ごらい しげる)
  • 出版社・取扱者 : 角川学芸出版(角川ソフィア文庫)
  • 発行年月 : 2010年6月25日
  • 本体価格 : 本体895円+税

I 現代と民俗
II 年中行事と民俗
III 祖先崇拝と民俗
IV 庶民信仰と民俗
V 聖と民俗
VI 修験道と民俗
解説(上別府 茂)
出典一覧

五来重氏は、仏教民俗学という分野の開拓者であるが、本書は氏の学問領域を俯瞰することのできる好著である。角川選書として1976年に刊行されたものが、この度、手に取りやすい文庫本の形で復刊された。

本書の特徴の一つは、わたしたちの身近にある盆踊り、仏壇、位牌、墓、祖先供養といった信仰の形を通して、日本における仏教受容の姿を分りやすく明らかにしている点である。

もう一つの特徴は、「遊行」「勧進聖」などの、庶民に受容された「歩く仏教」に焦点を当てている点である。「本来庶民の仏教は『歩く仏教』」だったのである」(20ページ)という著者の視点は、著者自身が日本全国をひたすら歩くなかで作り上げられていった。本書には、その歩きの中から得られた奥行き、風景、テンポが感じられる。読者には、「『あるく』という行為には人間の五〇万年の歴史がこもっている」(12ページ)ことを、ぜひ味わっていただきたい。


評者:藤丸 智雄(教学伝道研究センター常任研究員)


掲載日:2010年11月10日