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仏教誕生
本の紹介
  • 宮元 啓一 (みやもと けいいち)
  • 出版社・取扱者 : 講談社(講談社学術文庫)
  • 発行年月 : 2012年3月12日
  • 本体価格 : 本体800円+税

はしがき
第一章 仏教前夜
第二章 釈尊の生涯
第三章 最初期の仏教の考え方
さらに知りたい人のために
学術文庫版あとがき

本書は1995年に刊行された同名の書(筑摩書房)の文庫化である。インド学・インド思想史を専攻する宮元啓一・國學院大学教授は、本書では最初期の仏教を古代インドの一思想として位置づけ、古代インドの他の思想も視野に入れながら、最初期の仏教について解説していく。仏教の思想は、原形のままではなく、時代の変化に伴う展開を重ねながら現在に伝えられてきた。そこで著者は本書で、後世に加わったり変容した要素を排除し、最初期の仏教の姿に迫ることに努めている。

著者は、釈尊は生存欲を意図的に断つことを目指すニヒリズムと、「ある種肝腎なことがらをはずすことがなければ」(127ページ)原則に拘泥しない現実主義の面を持っていたと見て、早い時期に成立した仏典の記述に即しつつ、最新の学説も盛り込んで、独自の大胆な見地を披露する。また巻末で「さらに知りたい人のために」として有益な入門書・概説書類を豊富に紹介しており、学びを進めたい人に有益である。


評者:日野 慧運(浄土真宗本願寺派総合研究所研究助手)


掲載日:2012年06月11日