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比叡山と天台のこころ
本の紹介
  • 杉谷 義純 (すぎたに ぎじゅん)
  • 出版社・取扱者 : 春秋社
  • 発行年月 : 2009年9月30日
  • 本体価格 : 本体2,200円+税

はじめに
I 最澄がめざしたもの
「愚が中の極愚、狂が中の極狂」-最澄の願文を読む
II 円仁の夢-天台仏教の大成者
良源とその信仰-比叡山中興の祖
源信と往生要集-天台浄土教の完成者
天海の面目-江戸時代を作った天台仏教者
III 一隅を照らすこころ
世界平和の願い-比叡山宗教サミットのことなど
天台をいまに生きる
おわりに
主要参考文献

著者は天台宗元宗務総長で、現在は大正大学理事長などを務めている。また、比叡山宗教サミットや世界宗教者平和会議(WCRP)に携わり、宗教による世界平和の活動に尽力している。

日本の天台宗は『法華経』に基づく天台教学だけではなく、そこに密教や禅などが融合し、さらに浄土教が組み込まれた総合仏教であると言われる。親鸞聖人などの鎌倉仏教の祖師の多くが比叡山で学んだ経験を持ち、比叡山は日本仏教の母山とも言えるほど豊かな思想を有している。しかし、それが故に入門のための窓口は広く、また難解であるとの印象もある。

本書はこのようなことを踏まえ、伝教大師最澄をはじめとして円仁、源信など、比叡山の高僧を取り上げ、その生涯と思想を分かりやすく解説している。比叡山の現在にも多くのページを割き、比叡山宗教サミットの生みの親である山田恵諦天台座主と葉上照澄阿闍梨の活躍、また、作家・瀬戸内寂聴氏の出家得度についても紹介しており、天台宗の今も知ることができる。


評者:伊東 昌彦(教学伝道研究センター研究助手)


掲載日:2010年2月10日