- 出版社・取扱者 : 筑摩書房(ちくま学芸文庫)
- 発行年月 : 2009年9月10日
- 本体価格 : 本体1,100円+税
目 次 |
第一章 性の戒め 第二章 古代における僧の女犯 第三章 中世における僧の女犯 第四章 近世における僧の女犯 あとがき 解説 破戒の日本仏教史(松尾 剛次) |
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日本浄土教の研究者である著者は、『日本仏教における戒律の研究』(在家仏教協会、1963年)をはじめとした多くの戒律に関連する著作などをものしており、戒律の研究者としても名高い。現在にいたる日本仏教の戒律研究の道は、氏によって開かれたと言っても良い。本書はその戒律研究の精華の一つであり、日本仏教における「性」について、資料を駆使し、実証的に論じている。
第一章、第二章では、754年、苦難のはてに渡日を果たした鑑真によって確立された受戒制度が、さほど時を経ずして形式化の道をたどっていったことが叙述される。第三章では、中世の形式化の反動としての戒律復興運動と、「僧俗の境界を越えた境界が開け」ていく親鸞浄土教という二つの事象が、戒律の日本的受容の中で起きた背中合わせの現象として論じられている。第四章では、江戸幕府の政策や僧侶達の実態に対する当時の批判が紹介されている。
また本書は、仏教内資料のみならず、国家法や文学など多岐にわたる資料を使用し、総合的に考察を加えており、仏教と国家、仏教と日本文化の関係 について考える上でも、多くの示唆を与えてくれる。
評者:藤丸 智雄(教学伝道研究センター常任研究員)
掲載日:2010年2月10日