- 出版社・取扱者 : 吉川弘文館
- 発行年月 : 2010年9月10日
- 本体価格 : 本体2,600円+税
目 次 |
まえがき I ペット殺し社会、日本 殺生と肉食−その古代と近代− II 鯨墓と鯨供養 オオカミをとおして見る人と自然 狩猟をめぐる文化論 「殺す文化/食べる文化」再考 あとがき 初出一覧 |
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私たち人間は、何らかの形で動物の生命を奪いながら生活している。動物の生命について宗教(とりわけ日本の)ではどのように捉えているか、それを追究した一冊である。
本書は仏教と肉食について、興味深い指摘をする。肉を食べることは、動物の生命を奪うことである。そして仏教は不殺生を説く。ところが仏教は元来、肉食を禁止していなかった。しかし、インドにおける「浄/不浄」の観念の影響を受け、仏教でも肉食を避けるようになったという。さらに日本では、殺生や肉食はそれ自体の問題としてではなく、殺生や肉食という行為から派生する「穢れ」の問題として理解されるようになったと述べる。また、日本において捕鯨者たちが捕った鯨を供養し、その法要が仏教寺院で行われていたことにも言及する。
仏教との関わりを主に論じるのは「殺生と肉食」「鯨墓と鯨供養」の項であるが、それ以外も、動物の生命について考える手がかりを本書は与えてくれる。
評者:多田 修(教学伝道研究センター研究員)
掲載日:2011年5月13日