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日本語の奇跡 <アイウエオ>と<いろは>の発明
本の紹介
  • 山口 謠司 (やまぐち ようじ)
  • 出版社・取扱者 : 新潮社(新潮新書)
  • 発行年月 : 2007年12月20日
  • 本体価格 : 本体680円+税

序章 <ひらがな>と<カタカナ>
第一章 国家とは言葉である
第二章 淵源としてのサンスクリット語
第三章 万葉仮名の独創性
第四章 『万葉集』が読めなくなってしまった
第五章 空海が唐で学んできたこと
第六章 <いろは>の誕生
第七章 仮名はいかにして生まれたのか
第八章 明覚、加賀で五十音図を発明す
第九章 藤原定家と仮名遣い
第十章 さすが、宣長!
終章 素晴らしい日本語の世界
あとがき

本書は、日本語の形成を新鮮な視点から描いた一冊であり、かな文字や五十音図が仏教の影響のもとに成立したことを明かしている。

中国では仏典を訳すとき、意訳するのが困難な言葉について、サンスクリット語の意味ではなく発音を漢字に当てはめることが行われた。日本人は仏典を通して、漢字を意味ではなく発音を表す文字として用いることを知り、それがかな文字形成のもとになった。また、五十音図が現在の形になったのは江戸時代であるが、その原型を作ったのは平安中期の天台僧・明覚である。日本では空海以来、悉曇学(サンスクリット語の仏教経典を読解する学問)の研究がなされきた。明覚は悉曇学の研究を重ね、その成果をもとに母音と子音の組み合わせによる五十音図を編み出した。母音が「アイウエオ」の順で並んでいるのは、サンスクリット語の母音の順番を下敷きにしたからである。

日本語の形成に仏教が密接に絡んでいるという、仏教の隠された魅力を本書から味わえるであろう。


評者:大江 宏玄(教学伝道研究センター元研究助手)


掲載日:2011年9月12日