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読書雑志  中国の史書と宗教をめぐる十二章
本の紹介
  • 吉川 忠夫 (よしかわ ただお)
  • 出版社・取扱者 : 岩波書店
  • 発行年月 : 2010年1月27日
  • 本体価格 : 本体3,000円+税

第一章 史書の伝統−『史記』から『帝王世紀』まで
第二章 『史記』の十表と八書
第三章 顔師古−班固の忠臣
第四章 范曄と『後漢書』
第五章 陳寿と譙周
第六章 裴松之のこと
第七章 記憶につながる書物
第八章 王羲之と許邁−または王羲之と『真誥』
第九章 道教の大百科全書−『雲笈七籤』
第十章 償債と謫仙
第十一章 仏教という異文化−『弘明集 広弘明集』
第十二章 読書箚記三題
あとがき
初出一覧

中国仏教を理解するためには、中国の高僧が編んだ仏教書を読むのが重要であることについて言を俟たないが、その書物の背景には、仏教というインド発祥の宗教が、すでに高い文化・思想レベルを有していた中国に根を降ろしていく、ドラマチックな歴史がある。そうした、躍動感あふれる中国仏教の姿を知るには、高僧たちの手による仏教書だけではなく、中国の史書や歴史資料を読み解くことも必要になる。

著者の吉川忠夫氏(京都大学名誉教授、龍谷大学客員教授)は、中国史とりわけ魏晋南北朝時代(3〜6世紀)の宗教研究の第一人者である。本書は、著者が約20年にわたって一般の読者を対象として書いた原稿をまとめたものである。前半は中国の史書について、後半は歴史資料の中に出てくる仏教・道教・儒教の興味深いテーマについて、非常に分りやすく紹介されている。中国における仏教の歴史について興味のある方には、第七章「記憶につながる書物」から読み始めることをお薦めしたい。


評者:藤丸 智雄(教学伝道研究センター常任研究員)


掲載日:2011年2月10日