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たどたどしく声に出して読む 歎異抄
本の紹介
  • 伊藤 比呂美 (いとう ひろみ)
  • 出版社・取扱者 : ぷねうま舎
  • 発行年月 : 2012年4月10日
  • 本体価格 : 本体1,600円+税

ゼロから始める歎異抄
1 たどたどしく声に出して読む歎異抄
歎異抄 前
2 旅
歎異抄 後
3 旅
和讃  ひかりのうた
4 旅
親鸞書簡 前
5 旅
親鸞書簡 後
6 旅
和讃 かなしみのうた
7 旅
恵信尼書簡
8 旅
和讃 母や子のうた
9 旅
正信念仏偈 <むげんのひかり>さま
10 旅
和讃 うみのうた
11 旅
参考文献一覧

『歎異抄』は、親鸞聖人の肉声をいまに伝える貴重な書物であり、聖人の弟子である唯円房の作とされる。本書は、詩人である著者が親鸞聖人の言葉を「自分のことばに置き換えてみたい」という思いから、現代語訳したものである。書名にある「たどたどしく声に出して読む」は、この辺の事情を反映させているのではないかと思われる。

著者は、親鸞聖人の教えを述べた第1条から第9条を、詩の形式で語り、また聖人と異なった教えを歎く第10条以降は、聖人の言葉と唯円房の思いがそれぞれわかるよう工夫している。歯切れのよいリズムと、飾りのない響きが、著者の心を通した声となり、親しみやすい文体となっている。また、「親鸞」に「おれ」とルビを付けていることも面白い。

さらに『歎異抄』のみならず、親鸞聖人の和讃や書簡(御消息)、浄土真宗になじみの深い「正信念仏偈」(聖人の主著『教行信証』の一節)まで訳していることから、著者の聖人に対する思い入れと親近感が伝わってくる。


評者:前田 壽雄(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員)


掲載日:2012年09月10日