- 出版社・取扱者 : 講談社
- 発行年月 : 2010年11月10日
- 本体価格 : 本体1,500円+税
目 次 |
序−祈りと暴力の中世史 第一章 悪僧跋扈の時代 第二章 冥顕の中世 第三章 天台仏法の擁護者・良源 第四章 恠異・飛礫・呪詛 第五章 霊験と帰依 第六章 都鄙を闊歩する大衆・神人 第七章 強訴とはなにか 第八章 善なる大衆の時代へ 結−中世と現代の間 注 索引 |
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僧兵とは武装した僧侶であり、中世(平安後期〜室町期)に現れた。本書は、寺院が武装化した経緯やその正当化の論理を通して、中世の信仰のあり方を考察した一冊である。
本書は、寺院の武装化の背景には、平安中期に国家財政が逼迫して、寺院に対する国家の統制や保護が衰えたことがあると指摘する。それまで国家の保護を受けてきた寺院は、経済基盤の整備に迫られ各地に荘園を持ち、また治安が悪化する中で寺院財産を盗賊被害から自衛するため武装するようになった。武装を正当化したのは、僧物の防衛は仏法を守ることであるという「護法」の論理であった。この論理が拡大し、防衛の域を超える武力行使も、神仏に裏付けされた力の行使と見なされるに至った。戦国期に、織田信長の比叡山焼き討ちなど「神仏とは無関係な暴力の席巻」(223ページ)により、神仏を後ろ盾とした武力は解体された。
僧兵について「仏教界の堕落」として捉える人が多いであろうが、それにとどまらない多様な面が、本書よりうかがえる。
評者:多田 修(教学伝道研究センター研究員)
掲載日:2011年4月20日