- 出版社・取扱者 : 岩波書店
- 発行年月 : 2009年11月27日
- 本体価格 : 本体2,800円+税
目 次 |
第一部 親鸞研究序説 序 第一章 清沢満之から親鸞へ 第二章 親鸞と方法の問題 第三章 親鸞における信の位置 第四章 親鸞と悪人の概念 第五章 親鸞における覚醒の問題 第六章 悪の概念と学の理念 第七章 浄土門仏教の人間観 第二部 エセー 一 本願とは何か−親鸞思想の鍵概念(1) 二 凡夫とは何か−親鸞思想の鍵概念(2) 三 現代における悪の本質 四 漱石と親鸞 |
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著者の今村仁司氏(1942~2007)は、社会哲学的な視点から多くの書を世に問うてきた。それらの著作は、労働、暴力、儀礼、貨幣といった人間社会を構成する基本要素を対象としており、著者の分析の態度は、社会やそれを構成する人間への洞察に基づいている。そのことが、他分野からの評価を受け、広範な読者を獲得してきた。著者の社会分析、人間考察のフィールドは宗教にも及び、やがて浄土真宗、親鸞思想へと傾倒し、親鸞思想をテーマとした本書が、著者の絶筆となった。
本書は、親鸞聖人の主著『教行信証』に対する、社会哲学的な視点からの考察を収めた第一部と、凡夫や悪に対する個別のテーマに対するエッセーを収めた第二部からなる。本書の大きな特徴は、親鸞聖人を「日本仏教思想界における最初の法哲学者」(155ページ)と位置づけ、社会思想として親鸞思想を読み解いている点にある。社会哲学的な視点から切り込んでいく凡夫や悪に関する著者の考察は新鮮である。
評者:藤丸 智雄(教学伝道研究センター常任研究員)
掲載日:2010年5月10日