- 出版社・取扱者 : 講談社
- 発行年月 : 2012年1月14日
- 本体価格 : 本体3,000円+税
目 次 |
[上巻] 聖者の行進 招かれざる客たち 春風のなかで 人買いの市で 裸身の観音 新しい生活 深夜の逃走 夏の終わり 焼野原の風景 幻の七日 蛇抜けのごとく [下巻] 風と雪と海と 流れゆく歳月 未知の世界へ 山と水と空と まがりくねった道 稲田の草庵にて 風雨強かるべし 光陰矢のごとく 都を思えば 黒念仏の闇 出会いと別れ それぞれの出発 あとがき |
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本作は、五木寛之氏の『親鸞』(2010年刊)の続編である。前作では親鸞聖人が流罪となったところまでを描いていたが、本作では、親鸞聖人が越後や関東で暮らしていた時期がテーマとなっている。
親鸞聖人の生涯(とりわけ越後にいた時期)については記録が乏しく、不明な点が多い。本作では、親鸞聖人の生涯を「小説」として、果敢に、そして魅力的に描き出している。親鸞聖人の著作を教義という視点から読む者は、その高度に思弁的な宗教思想家としての親鸞像をそこに見るが、『御消息』『歎異抄』『口伝鈔』等においては、多くの人びとからの、時に素朴な問いへ応えていく伝道者としての姿を見ることができる。本作では、親鸞聖人は仲間とともに行動し、ともに悩む。それが人びとを惹きつけ、救いとなっていく。親鸞聖人を、行動し、葛藤の中にありつづける者として描きだしているところが、本作の野趣になっている。
次回作では、晩年の親鸞聖人を作品にされることだろう。その姿がどのように描かれるのだろうか。期待したい。
評者:藤丸 智雄(浄土真宗本願寺派総合研究所教団総合研究室長)
掲載日:2012年08月10日