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親鸞からの手紙
本の紹介
  • 阿満 利麿 (あま としまろ)
  • 出版社・取扱者 : 筑摩書房(ちくま学芸文庫)
  • 発行年月 : 2010年6月10日
  • 本体価格 : 本体1,200円+税

はじめに
親鸞史蹟略図
第一通  いや女を譲り渡すこと
(中略)
第四二通 いまごぜんのははとそくしょうぼうのこと
親鸞からの手紙原文
消息一覧
年表
参考文献
あとがき

著者は明治学院大学名誉教授。本書は、著者の講義「親鸞からの手紙を読む」を元に編集されたものであり、親鸞聖人の手紙のうち現存する全42通の原文と意訳・解説を収録している。

これらの手紙には、親鸞聖人の思いだけでなく、門弟たちの状況も反映されている。著者は、手紙が書かれた動機として「造悪無碍」(悪人正機を曲解し、積極的に悪事を肯定する主張)と「賢善精進」(悪を止め善を実践しないと浄土への往生は難しいとする主張)の相克を挙げている(35ページ)。さらに著者は、手紙の多くが「回覧されることを期待して書かれて」(37ページ)いると指摘し、これは当時、親鸞聖人と門弟たちが互いに同行として暮らす「信仰共同体」を作っていたことを示していると言う。ところで、親鸞聖人は60歳頃に関東から京都へ帰っており、その理由に諸説あるが、著者は「専修念仏の教えより親鸞そのものが崇敬される」人師崇拝の怖れを挙げており(126ページ)、この点も興味深い。

本書は、親鸞聖人の手紙の意図や当時の信仰の姿に関して、様々な知見をもたらしてくれる。


評者:大江 宏玄(教学伝道研究センター元研究助手)


掲載日:2010年10月12日