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沙門ブッダの成立 原始仏教とジャイナ教の間
本の紹介
  • 山崎 守一 (やまざき もりいち)
  • 出版社・取扱者 : 大蔵出版
  • 発行年月 : 2010年11月30日
  • 本体価格 : 本体2,300円+税

はしがき
第一章 ウパニシャッドの思想
第二章 仏教を理解するための資料編
第三章 仏教誕生の背景
第四章 出家修行者たちの実態
第五章 沙門(出家修行者)の呼称
第六章 ゴータマ・ブッダ
第七章 禅定と苦行−ジャイナ教との比較
第八章 覚りの内容
第九章 ブッダが目指したもの−平安の境地
あとがき
主要参考文献

本書は、仏教と同時代にインドに登場したジャイナ教と比較しながら、原始仏教の特徴を明らかにしようとするものである。両者とも「もともとバラモンに対抗して遊行・遍歴する沙門の集団から、独自の教団として擡頭した」(2ページ)宗教であるため、「教理(世界観、人生観、倫理観など)や実践道に共通点が見られる」(同前)。したがって、仏教をより正確に理解するためには、どの部分が沙門(バラモン教以外の出家修行者)に共通する思想なのか、どの部分が他の沙門たちと異なる仏教独自の思想なのかを見極めていく必要がある。

両宗教には、平等思想、煩悩についての考え方など、多くの類似点がある。本書はそれらを指摘しながら、ジャイナ教が想像を絶する苦行をなすことで涅槃を目指すのに対し、仏教は涅槃を得るために「『智慧』(明智)を」もたなければならない」と説くという、実践道に大きな違いがあることを示して締めくくっている(212ページ)。


評者:鈴木 健太(教学伝道研究センター元研究助手)


掲載日:2011年3月10日