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西国巡礼の寺
本の紹介
  • 五来 重 (ごらい しげる)
  • 出版社・取扱者 : 角川学芸出版(角川ソフィア文庫)
  • 発行年月 : 2008年11月25日
  • 本体価格 : 本体857円+税

第一講  総論、第十六番 清水寺
第二講  第一番 青岸渡寺、第二番 紀三井寺
第三講  第九番 興福寺南円堂
第四講  第六番 壺阪寺
第五講  第十一番 上醍醐寺、第十二番 岩間寺
第六講  第十三番 石山寺、第十四番 三井寺
第七講  第十五番 今熊野観音寺、第十七番 六波羅蜜寺
第八講  第十八番 六角堂、第十九番 革堂
第九講  第二十番 善峰寺、第二十一番 穴太寺
第十講  第三十番 竹生島宝厳寺、第三十一番 長命寺
第十一講 第三十二番 観音正寺、第五番 葛井寺
第十二講 第三十三番 谷汲山華厳寺
解説(山折 哲雄)
西国三十三所所在地

旺盛なフィールドワークの精華、広博な知見、それらに基づいた自由に跳躍するイマジネーション―仏教民族学者の泰斗、五来重氏の面目躍如の一冊である。12の講を設け、西国三十三所の寺院一つひとつについて解説が加えられる。本書はカルチャーセンターでの講義を元にしたものであり、文面から氏の語りのリズムが伝わってきて読みやすい。読み進めていく内に、氏の豊穣な宗教知識の海にたゆたう感を覚える。本書の魅力の一つは、「総論」の「巡礼」に対する考察である。世界の歩く信仰、遍路、観音信仰などが、巡礼という切り口から語られ、大いに好奇心が刺激される考察となっている。

本書の読み方としては、最初から順次読み進めていくのも良いが、親しみのある寺院から読み始めるのをおすすめしたい。浄土真宗との関連では、親鸞聖人の大きな転機となった、六角堂における聖徳太子の夢告(247ページでは「日本の宗教史上の大きな事件」と評する)について考察を加えており、興味深い。


評者:藤丸 智雄(教学伝道研究センター常任研究員)


掲載日:2009年5月11日