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権力に抗った薩摩人 -薩摩藩政時代の真宗弾圧とかくれ念佛-
本の紹介
  • 芳 即正 (かんばし のりまさ)
  • 出版社・取扱者 : 南方新社
  • 発行年月 : 2009年8月20日
  • 本体価格 : 本体1,000円+税

序文
一 禁教の発端
二 信者はひそむ
三 不服従の抵抗
かくれ念仏ゆかりの地マップ

本書は、鹿児島純心女子短期大学名誉教授である著者が、薩摩藩政時代における真宗弾圧とかくれ念仏について綴った一冊である。鹿児島県の切り花販売額は全国1位であるとされるが、その背景には江戸時代における真宗弾圧が要因となっていると著者は語る。「念仏禁制」と呼ばれるこの弾圧について「この土地の人々はどのように対応したのでしょうか。そのことを事実に即して反省し、かつ現在この土地に住む人々はもちろん、一般にどう受けとめるべきかを、正面からと問い直してみることは、極めて価値あることだと考えます。」(13ページ)との著者の思いをもとに、本文がはじまっている。

江戸時代における宗教事情から念仏弾圧にいたるまでの背景を、史実を検証しながら考察し、かくれ念仏として2世紀以上ものあいだ連綿として信仰を継承してきた薩摩の民衆を「日本精神史の光輝ある存在」(72ページ)と述べている。その精神を支えたものとは、如何なるものであろうか、現代に問いかける一冊である。


評者:大江 宏玄(教学伝道研究センター元研究助手)


掲載日:2010年1月12日