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冥途の旅はなぜ四十九日なのか
本の紹介
  • 柳谷 晃 (やなぎや あきら)
  • 出版社・取扱者 : 青春出版社(青春新書インテリジェンス)
  • 発行年月 : 2009年5月15日
  • 本体価格 : 本体780円+税

はじめに
第一章 極楽浄土までの距離に見る、仏教のすごい自然観~仏教的宇宙に秘められた「数学的」世界
第二章 五重塔・仏像が教える、計算しつくされた構造~仏教的建築・遺跡に隠された「数学的」世界
第三章 除夜の鐘を百八回つかねばならない数学的事情~仏教的物語・思想・用語の裏にある「数学的」世界
第四章 仏教はなぜか2乗の数がお好き?~仏教の歴史に残る「数学的」世界
第五章 冥途の旅はなぜ四十九日なのか~仏教的風習・習慣に見る「数学的」世界
おわりに

著者は早稲田大学高等学院数学科教諭などを務める数学研究者。本書は、その著者が仏教の世界を数学的世界観によって読み解き、仏教用語などに用いられる「数」の特徴を探ったものである。

第1章では、『阿弥陀経』というお経の中に出てくる、我々が住んでいる世界と極楽浄土との距離に触れ、仏教世界の時間・空間がいかに広大であるかということなどが紹介されている。第2章は、五重塔に見られる、計算しつくされた建築構造などをもとに、仏教建築・芸術に隠された科学的知見を明らかにしている。第3章では、除夜の鐘を打つ回数のもとになっている「百八」煩悩の数が、6×3×2×3という計算にもとづいていることを始めとして、いろいろな仏教用語の背景にある計算などが紹介されている。第4章は、「四」天王、「十六」羅漢といったような仏教用語に出てくる2乗の数を取り上げ、2乗の数の魅力を紹介するなどしている。第5章は、四十九日の法要など、仏教の風習・習慣を数字に注目して説明していく。

仏教と数学という、一見すると全く関係がなさそうな両者の繋がりを探り、昔の人々の知恵を学ぶこともできる一冊になっている。


評者:大江 宏玄(教学伝道研究センター元研究助手)


掲載日:2009年9月10日